亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
今朝は妹が朝の支度をする筈だった。几帳面なあの娘が、弟の朝食の用意が出来ていないなんて……。

嫌な予感がした。マリアはさっと青ざめる。

「……カザレ………ミラはどうしたの?朝からいた筈よ……」

苛立つカザレは安っぽい煙管をマリアに投げ付けてきた。

「……知らないね!あんな奴!また何処かでさぼってるんじゃないのか!」

それより早く着替えと食事を持って来い、と喚き散らすカザレを置いて、マリアは家の端にあるキッチンへと向かった。

………さっき摘んできた花の香りが染み付いて気がつかなかったが………家中の空気がなんだか焦げ臭かった。

キッチンへと続く狭く短い廊下は黒い煙がうっすらと漂っている。

小汚ない鍋や皿が並んだ古いキッチンのドアを開け放つと、そこに立っている筈のミラの姿は無い。

………野菜の皮とナイフが散乱した床に、小柄で華奢な娘が倒れていた。

マリアは慌てて駆け寄った。

「―――ミラ!」

生まれつき身体が弱く、心臓に病を抱えている一つ下の妹。

暑くもないのにミラはぐっしょりと汗をかき、呼吸もおかしかった。

マリアは手慣れた様子でミラの身体を起こし、女三人で使っている部屋へ連れて行った。

< 448 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop