亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
見た目だけが好青年なカザレは、あちこちの村で、うちの娘を嫁に、と引っ張りだこだ。

父は自慢の息子に酔っている。


良い嫁を探そうと毎日毎日何処かの村へ出ている。


カザレはカザレで、モテている自分にこれまた酔っていて、ちょっと熱いスープを出せば、「この俺に火傷させる気か」とか言ってくる。



母とミラはそんなカザレに怯えている様だった。しかしマリアは、怖がりなどしない。

幼い頃から、誰に対しても笑顔でいた。

どんなに怒鳴られても、叩かれても、酷いことを言われても、全て笑顔で受け止めた。

優しいわけじゃない。









この方が、楽だったから。










その夜、亀裂だらけの鏡を前に、散々殴られてぐしゃぐしゃになった髪をゆっくりと解かしていた。


蝋燭の明かりの中にいる自分の姿は、酷く痩せていて、顔色が悪くて………惨めだった。

一つしかない使い古したコルセットをいくらきつく絞めても、やせ細った身体からするりと抜け落ちる。

…………マリアはこの年で18だった。

早ければ16で何処かに嫁がされるのだが、それは絶対ではない。


一生結婚もせず、こき使われて死んで行く女の方が多い。
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