亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――私を?」
マリアは何度も瞬きを繰り返した。
傍らで、今日は顔色が良いミラがとても喜んでいた。
「……姉さん…良かったわね!相手の方は前から姉さんのことを知っていたみたいよ!この村に来る度に遠くから姉さんを見ていたんですって!」
それは突然だった。
マリアに結婚の話が持ち上がったのだ。
渦中の人物はこの村からそう遠くない村の青年で、歳は一つ上の19。
商いで辺りの村を転々と歩き回っている際、早朝に花摘みに出かけていたマリアに、一目ぼれしたとかなんとか。
「……結婚なんて……叶わないと思っていたけど……男性からの話ですもの。頑固なあの人もきっと考えてくれるよ」
ミラと母は二人揃ってはしゃいでいた。
当のマリアは、首を傾げるばかりだった。
名前も知らなければ、顔も知らない。
どんな人なのか、全く分からない。
……男性が…好いてくれる。
………………なんだか複雑だった。
恋愛など、マリアには縁のないものだった。
………結婚………しなければならないのだろうか。