亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


マリアは、結婚の話を断った。

誰かがそう促したわけではない。

マリア自身の意志だった。

これには、母もミラも、あの父もカザレさえも驚いていた。
父はこの話に乗るつもりだったらしい。
あからさまに顔をしかめたカザレが、マリアの所へやって来た。

「どうして断ったんだ!俺の知り合いだったんだ!俺に恥をかかせたいのか!」

世間体ばかりを気にしているカザレ。マリアの意志など関係ないのだろう。

「………嫁いだら………ミラの病気のことや……貴方の世話がみれなくなるでしょう?……だから………結婚なんて……」

「そんなの、全部あのばばあにやらせれば良い」

―――それが嫌なのだ。

母も元々身体が丈夫なわけではない。
今ある家事や仕事を全て押しつければ、すぐに倒れてしまう。

そうならないために、マリアは拒絶したのだ。

「………私のことはもう良いでしょう。今は貴方の縁談の方が大事よ。………昼食なら今から部屋に持って行くから…」

「言い訳だな」

鼻で笑ったカザレの声が、皿を洗うマリアの手を止めた。

マリアはカザレに振り返った。


「………何?」

「言い訳だって言ったんだよ。本当は違うだろ?家の事を言い訳にしているだけだ」
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