亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……チクチクと、刺す様な痛みが胸に広がる。
「結婚が怖いんだろう?…後々が不安で仕方無いんだろう?……嫌々やってる俺の世話や仕事から逃げたくても、昔からやってるんだ………いざこの環境から逃げ出せると分かると、急に怖くなったんだ。………お前はあのばばあが言う様な善良な人間なんかじゃないね……お前はただ…」
カザレがにやりと笑った。
「………出来るだけ、楽な方にいたいだけなんだよ」
その夜、マリアは家畜用の鞭で目茶苦茶に叩かれ、痛みに堪えながら、押し込まれた納屋の中で身体を丸めていた。
昼間、マリアは自分でも分からない内にヒステリックに陥っていた。
持っていた果物ナイフを振り回し、傷つける気はなかったのだが、カザレの腕に切り傷を付けてしまった。
傷は浅く、大して血も出なかったが、カザレがそのことを父に告げ口するや否や、父は顔を真っ赤にして鞭を握った。
背中が痛い。
ヒリヒリする。
藁が傷口に当たって痛い。
………図星だった。
あの子はちゃんと分かっていたのだ。
私自身でさえ、見ようとしなかった所を。