亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
今は容赦無い戦争の世の中。

人が死ぬのも、醜い屍になるのも、獣に食らわれるのも、珍しくない。

―――しかしやはり………同胞が死ぬのは、やりきれない。…悔しい。………守れなかった。
………もっと早く駆け付けていれば……。


「―――…気にすんな…お前に責任は無えよ。……おい誰か!……火を持って来い」


兵士の亡骸を一瞥し、ジスカは命令を下した。


―――燃やさなければならない。


死んだ人間を数時間そのままにしていれば、影になってしまう。

………棺に入れることも出来ない。

原形を…止どめない様に。
肉は燃やし、骨は砂状になるまで砕く。


どうして、死んだ後もこの様な報いを受けなければならないのだろう。


兵士が松明を持って戻って来た。

そのまま、兵士の屍に火を付けた。



油を撒いた訳でもないのに、火はたちまち屍に燃え移り、全身を舐めていく。


赤く、静かに燃える人間。
こうして見下ろしていると……空しさが込み上げてきた。
…人間は、脆い。


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