亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
人の焼けていく臭い。………もう、慣れた。

「―――後の処理は任せる……」

すっと顔を背け、トウェインは踵を返した。

「イブ、すまないが…今日は訓練に付き合えん。マリア達にもそう伝えておいてくれ」

真っ直ぐ前を見据えたままのトウェイン。………その表情は、不思議なほど……穏やかだった。
……いや、何の感情も無いと言った方がいいのかもしれない。

「―――…御意」

あえて何も言わずに、イブは“闇溶け”でその場から立ち去った。



塔に戻っている最中、いつもなら多弁なジスカが、妙に静かだった。
………こいつはこいつなりに、心配してくれているのだろう。

お人好しめ。

「―――………あ、そうだ………良い酒が手に入ったんだよ。どうだ?今夜辺り………おっとしまった。うら若い娘が男の部屋にくるもんじゃねえな―?」

ごく自然に、明るく接するジスカ。
………励まされているようでは、私もまだまだだな…。

苦笑を浮かべるトウェイン。………こういう人間臭い面では、こいつには勝てない。

「……私が女だと、よく思い出したな?………阿呆が」





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