亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
頭を下げようともせず総隊長に正面から歩み寄るトウェインに、ベルトークは立ち上がった。

「……なんだその無礼な態度は。………お前らしくもない……」


部屋の中央辺りで足を止め、トウェインはベルトークに視線を移した。

………今にも噛付きそうな目だ。


「………ベルトーク隊長……私は総隊長と話をしたいのです………」

「………だからと言って……許される訳では無いのだぞ……総隊長の前だ。その態度を慎め…」

「………私は隊長と口論する気はありません」



………険悪な空気が漂い始めた。
……何がどうしてこんな事態になったのか。いざとなったらジスカはトウェインを止める気だった。

………一体どうしたんだ?何があったんだ?


「―――ふん………口まで悪くなったか………………もう……この『芝居』も…潮時か……」

―――……『芝居』。

「…………ベルトーク隊長………………貴方も…………貴方も…!」

奥歯を噛み締めるトウェイン。また一歩踏み出した途端、総隊長の前にベルトークが出て来た。


「………総隊長……こうなる事は分かっていた筈。…………この娘はやはり………」

ベルトークの右手に、冷たい闇が絡み付いた。

………長い刃が覗いていた。
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