亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



真っ白になってしまった頭でも、身体はちゃんと動く。
……人間はよく出来ている。


真っ直ぐ自室に戻り、部屋に入るや否や固いベッドに倒れこんだ。

何処からともなくトゥラが現れ、横たわるトウェインに歩み寄る。心配そうに側に座り、軽く鼻先を押しつけてきた。

「…………大丈夫だ……………………少し……頭痛がするだけだ…………すぐに治るからな…」


再び、ずきずきと鈍い痛みが襲って来た。

ずきりと一つ痛みが走る度に、無くしていた記憶の映像が脳裏を過ぎる。



目を瞑っても、唇を噛み締めても、顔を埋めても、それははっきりと、色鮮やかに蘇る。


実感の無い、記憶。そこには何の感情も無い。懐かしいと感じることも無い。










「………トゥラ………お前は……私が私でなくなったらどう思う…?」

そっとトゥラの背を撫で、抱き締めた。
主人の肩に顎を置き、小さく鳴いた。












「……………私がいなくなったら…………どう思う…?……………………トゥラ………」

六年という歳月。

ただがむしゃらに剣を振り、総隊長に従い、敵と思っていた人間を……殺してきた。


何人も。



何人も。




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