亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
庇ってくれようとはしているのだが、どうしても祖母に頭が上がらない様だった。


すっかり日も暮れ、真っ暗になった外。

裏手へ回り、高々と積み上げられた薪の山に歩み寄った。


小さな身体を出来る限り伸ばし、一つずつ薪を取る。


………指先に鈍い痛みが走った。

ささくれた薪の表面で切ってしまった様だった。
半ば反射的に口に含む。

………口内にじわりと広がる苦い味は、もうすっかり味わい尽くしたものだった。









冬が終わりを告げようとしていた。

まだまだ肌寒いとある朝。

村の家畜が全部死んでいた。

村中に、吐き気をもよおす奇妙な異臭が立ち込めていた。
家畜のほとんどは酷い有様で、殺された、と言うより、喰い荒らされたと言った方が適当な景色だった。


「………なんだこれは……みろよ…腸がごっそり抉れてるぜ…」

「………鳥は全部頭だけか……気持ち悪い………」

「……この散らかし方は……“影”じゃないか…?」

「………だな。……………とうとうこの辺りまで出る様になったか………」


あのクーデターから早二年。
以前よりも“影”が頻繁に出没する様になっていた。今は被害は家畜に止どまっているが……いずれは……。
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