亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………未だその生態が解明されていない、呪いの化け物。
………それらに食い潰された村や街は数知れない。
「………どうしたら良いんだ………」
いずれは……人も襲われる。家畜を喰い荒らし、口にするものが無くなれば、その食欲は今度は人間に向く。
………いつまで……あんな化け物に怯えていればいいのだ?
「これも全部………王族のせいだ………その配下の連中も、革命派だとほざいている奴等も………やってる事は全部人殺しだ…!………影を生産してるのと同じだ………」
村人の中には、どちらの勢力にも反抗意識を持つ者も少なくなかった。
無残な家畜の亡骸を拾い集める村人達。
眉をひそめる大人や子供に混じり、ダリルも乾ききった骨の破片や、蛆のわいた肉片を無表情で拾い集めていた。
骨も肉片も細かくして灰にしなければ、新たな影が生まれてしまう。
「………おいダリル。……皆影のせいだとか言ってるけどよ…お前がやったんじゃないのか―?」
黙々と手を動かしている最中、後ろからとんでもない事を言われた。
ダリルは怪訝な表情で振り替える。
顔は分からないが、誰だかはすぐ分かる。
ダリルを苛める村の子供達の一人。一番質の悪い苛めっ子だ。