亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「だったら、影の仕業だっていう証拠見せろよ!お前じゃないんだろ!」

「今夜見回りがあるらしいぜ。…影をいち早く見つけてみろよ。影退治に貢献するのさ」


……話が厄介な方へと転がる。夜、村の外れに独りで…しかも子供だけで出歩くなど、危険過ぎる。


ダリルは口籠った。



………子供の戯言。



意味の無い、子供の肝試し。

そうと分かっているのに………。

…………ゆっくりと頷く、まだまだ子供な自分がそこにいた。















開けにくい戸棚の奥に隠れていた、小さな小さなナイフ。

それだけが唯一の武器と言える武器で、それを腰のベルトに潜ませた自分は、なんだかとても頼り無く思えた。

母も祖母も就寝した家から、息を殺してそっと出て来た。

草が風に揺れる音や、虫の奏でる求愛。肌を刺す冷たい息吹に、無言で見守る真っ暗な闇。


一歩村の外を出ると、ダリルは完全に独りだった。

反対側の村の外れに、いくつもの小さな明かりがちらついている。ダリルにはその明かりが見えないが、遠くから足音や話し声がはっきりと聞こえていた。


村の大人達が数人で見回りをしている様だった。

見つかればいろいろと厄介な事になる。

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