亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

草むらを掻き分けながら、奥深い森を少しずつ進んだ。




………自分はなんて…馬鹿な事をしているのだろうか。






夜気に濡れた冷たい葉が頬を撫でる。



………意味の無い事であると分かっているのに………。



………でも。












―――………ねぇダリル…泣かないで。……………泣かないの。


―――…貴方はおかしくなんかないわ。普通の人より、違う特技があるだけよ。


―――………お母さんと一緒。…同じ目の色…髪の色。……お顔はお父さん似ね。


―――良い子ねぇ。ダリル………貴方は本当に良い子。………お母さんの子よ……………だから……………泣かないで。














母は、この世で唯一頼れる…信じる事が出来る……大切な人だ。


僕を…僕を見る奴は嫌い。……皆嫌い。皆、皆。






お母さんは好き。


お母さんだけ、好き。
お母さんだけでいい。



あとは………要らない。


























―――ふと気がつくと、いつの間にかだいぶ奥深くまで歩いていた。

………村から少し離れてしまった。

…………戻らないと……。


< 680 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop