亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
草むらを掻き分けながら、奥深い森を少しずつ進んだ。
………自分はなんて…馬鹿な事をしているのだろうか。
夜気に濡れた冷たい葉が頬を撫でる。
………意味の無い事であると分かっているのに………。
………でも。
―――………ねぇダリル…泣かないで。……………泣かないの。
―――…貴方はおかしくなんかないわ。普通の人より、違う特技があるだけよ。
―――………お母さんと一緒。…同じ目の色…髪の色。……お顔はお父さん似ね。
―――良い子ねぇ。ダリル………貴方は本当に良い子。………お母さんの子よ……………だから……………泣かないで。
母は、この世で唯一頼れる…信じる事が出来る……大切な人だ。
僕を…僕を見る奴は嫌い。……皆嫌い。皆、皆。
お母さんは好き。
お母さんだけ、好き。
お母さんだけでいい。
あとは………要らない。
―――ふと気がつくと、いつの間にかだいぶ奥深くまで歩いていた。
………村から少し離れてしまった。
…………戻らないと……。