亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
幼い頃から……生まれた時から…分かっていた。
自分は違うのだ。
自分は………まともな人間である自分と………まともじゃない紛い物で出来ているって。
そうに違いないんだ。
そうでもなきゃ。
影なんて殺せない。
―――松明を掲げた大人達が闇夜を照らすと、そこには目を見張る惨状が広がっていた。
忽然と広がる、直径二メートルの陥没した大地。
たいして深くは無いが、その丸い縁はくりぬいた様に滑らかな曲線を描いていた。
カラカラに乾いた地面。空気も薄い様に感じる。
丸い穴の周りには、異臭が漂う真っ黒な粘着物が飛び散っていた。シュゥ―…と黒ずんだ煙が立つ、ドロドロとした液体。それはゆっくりと穴へ流れ込んでいく。
………よく見ると、地面には鳥や野鼠の死骸が散乱している。………細かな肉片や骨、体毛や皮膚から千切れた羽。もがれた足に、綺麗にくりぬいた様な丸い眼球。血の赤い蒸気。
………どれも原形を止どめていない。
穴の底を覗くと、水分など皆無の乾ききった菱形の赤い目玉が転がっていた。
少し離れた所で、彼は膝を抱えて……泣いていた。
自分は違うのだ。
自分は………まともな人間である自分と………まともじゃない紛い物で出来ているって。
そうに違いないんだ。
そうでもなきゃ。
影なんて殺せない。
―――松明を掲げた大人達が闇夜を照らすと、そこには目を見張る惨状が広がっていた。
忽然と広がる、直径二メートルの陥没した大地。
たいして深くは無いが、その丸い縁はくりぬいた様に滑らかな曲線を描いていた。
カラカラに乾いた地面。空気も薄い様に感じる。
丸い穴の周りには、異臭が漂う真っ黒な粘着物が飛び散っていた。シュゥ―…と黒ずんだ煙が立つ、ドロドロとした液体。それはゆっくりと穴へ流れ込んでいく。
………よく見ると、地面には鳥や野鼠の死骸が散乱している。………細かな肉片や骨、体毛や皮膚から千切れた羽。もがれた足に、綺麗にくりぬいた様な丸い眼球。血の赤い蒸気。
………どれも原形を止どめていない。
穴の底を覗くと、水分など皆無の乾ききった菱形の赤い目玉が転がっていた。
少し離れた所で、彼は膝を抱えて……泣いていた。