亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
どうして?

皆…皆…そんなに僕が嫌い?

僕は一体……!




ズルズルと男はダリルを引きずって行く。


突然フワリと身体が浮いたかと思うと、木箱が群れなす高い馬車の後ろ側に放り投げられた。


すぐに起き上がり、馬車から飛び降りようとするが、男がさせまいと制する。

「……こんなの……!こんな……の…!」





………人だかりの向こうから、走って来る母の姿が見えた。


ダリルは馬車から身体を乗り出した。

「………お母さん!!」

「………止めておけ」

男の低い声が聞こえた。鋭い眼光は近寄って来るダリルの母を真直ぐ見据えている。

「……………辛くなるだけだ」


………気を遣って言っているのか何なのか。
ダリルは男の忠告を無視し、大きな腕を撥ね除けて馬車から飛び降りた。

………今度は、男は止めようとしなかった。


駆け寄って来た母の腕の中に、ダリルは飛び込んだ。


「……お母さん!………なんで?………僕はなんで村を追い出されるの?……皆……僕が嫌い?………………………………僕が………………一体何をしたっていうの………?」



何をした?


………何かした?


僕は……………。



「………ダリル…」
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