亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………人間は、男も女も、どんなに容姿端麗でも……皮をひっぺ返せば皆同じだと思う。
ただの、赤いグロテスクな肉塊だ。
破裂してしまえば、人であったかさえ……分からないものだ。
…袖口に柔らかいものが付着していた。
………今弾け飛んだ肉片だろう。
極自然に、ダリルは手で払い落とした。
………足下には、そんな肉片が散乱していた。
生暖かい鮮血の蒸気。
蒸せる様なこの臭いにも、もう慣れた。
………別の気配がこちらに近寄って来ていた。姿や足音さえ聞こえないが、それは確実に、物凄い速さで迫って来ていた。
「―――ここは食い止めるから……早く行って…」
背後の茂みで、負傷しながらも剣を構えていた男に言った。
「………任せた!」
男は血だらけの足を引き摺って、森林の奥へ消えた。
独り残されたダリルは、徐々に距離を縮めて来る敵を待った。
………見つめる先からは、本当に音も何も無い。
(………先週は騎士団……今日は…暗殺集団の方か)
少しうんざりしながらも、ダリルは警戒心を強める。
その数秒後。
…突然、何も無い空間から、真っ黒な煙を纏った人間が現れた。