亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
灰色の軍服。
深く帽子を被った男。
片手には鋭い剣が握られていた。
………森林の中に独り佇んでいたダリルを不思議に思ったのか、その兵士はそっと近寄って来た。
………まだ10歳かそこらの少年。しかもこちらを見つめる瞳は焦点が定まっていない。
こんな森の中で…子供が。
「………何だ小僧……お前…何をして………」
足下に目を移した途端、兵士はさっと青ざめた。
………人畜無害にしか見えない少年の周りは、グロテスクな死骸が散乱していた。
瞬間、兵士は飛び退いてダリルから距離を取った。
すぐに剣を構える。
「………ここ数年……偵察に行った兵士が一人も戻って来ない事態が多発していたが………小僧……お前か……!」
「………だとしたら?」
ダリルは足下の肉片を踏みつぶした。
戦争には欠かせない武器や資金、食料を運ぶ際、偵察をしている国家騎士団やアレスの使者に見つからない様にしなければならない。
一人でも見つかればお終い。仲間の数や組織の居場所を全て吐かされ、後は根絶やしにされるのだ。
ダリルはそれを防ぐ、言わば番人。
逃走経路を作り、追っ手を全て………殺していく。
ダリルを見た者で生きている敵はまだいない。