亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
兵士はふっと、その場で消え失せた。
小さな濃い黒煙が立ち込める。
………何度か見たことがある。確か…“闇溶け”とかいった。あの国家騎士団をてこずらせているとかいう、特殊な技。
………しかしそれも。
「―――……見えてるよ」
身体を後ろに傾けた瞬間、鼻先を鋭利な剣先が縦一直線に通り過ぎて行った。
気配を完全に消して攻撃した筈。……すんなりと避けられたことに兵士は驚いた様だ。
再度“闇溶け”をしようとした途端…。
………弱々しい小さな手が腕を掴んだ。
「―――…捕まえた―……………ハハッ……」
兵士は目を丸くした。
そんな…………馬鹿な………。
………“闇溶け”が…。
………出来ない…!?
もう一方の空いている手が、一瞬で兵士の胸元にあてられた。
…………ズブリ。
生々しい音が聞こえたかと思うと、少年の手はあっという間に兵士の身体にめり込んだ。
「――――………サヨウナラ」