亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「…………僕一人で良いのに」
ダリルは溜め息混じりに呟いた。
背後の方。少し離れた所で、バトラーの気配がする。
…彼は何処か、部下や年下に対して過保護的な面がある。………敵撃退用の駒であるダリルに対しても、その様子が窺える。
……心配してくれているのか。
息を潜めるバトラーを傍目に、ダリルは問題の廃墟に視線を移した。
………知らない足音と息遣いが聞こえてきた。
真っ暗な頭の中で、人影らしき形が徐々に、鮮明に浮き彫りになっていく。
敵は廃墟の外にいた。
………二人。それ以外の気配は皆無。何処かに奴等の仲間が隠れている様子も無い。見張りも無い。あのしつこい黒い犬もいない。
―――片方は背が高い。もう片方は小さく見える。………小さいのだろうか。自分より少し高い位だ。
二人の人間は何やらぼそぼそと会話をしていた。
どんな内容か聞き取ろうと感覚を研ぎ澄ませた瞬間、会話は途絶えた。
………小さい方がすっと廃墟を離れ、何処かへ歩いて行った。背の高い方はそのまま、ぽつんと一人だけ残された。
ダリルは、使い古したナイフの柄を握り締めた。
……………今が、機だ。