亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
今はまだ早朝で薄暗いといえども、大地には日が射している。相手は十八番の“闇溶け”が上手く出来ない筈だ。

………ダリルの前では、そんな能力は無いに等しいが。



ダリルは陰を伝いながらじわじわと距離を縮めていった。

殺気は無い。

……この唯一の仕事に対するダリルの感情。それは無機質。

完全なる、無。








廃墟の外で独り佇む兵士。
辺りをぼんやりと見回し、時折黄金色の空を見上げている。


………その広い背中を、じっと見つめた。

光も届かない、外界から遮断された瞳で。











――――ブンッ



















……ダリルの足元を中心に、世界が一瞬で真っ暗な空気を纏った。

緑の木々も、赤茶色に錆びた廃墟も、寒空に浮かぶ純白の雲も、黄金色の朝日も。



全て。


全て。



………大地からじんわりと黒く染まっていく。透明な水面に注いだ様に。

音も無く、静かに………浸食していく。








………真っ暗闇。

そこに街の姿は無い。

あるのは静かに佇むダリル自身と、前方に見える敵兵士のみだ。


………ダリル以外、全てが静止していた。

敵兵士の背中はピクリとも動かない。
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