亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
外界から切り落とされたかの様に、無音と化したこの奇妙な世界。

迷うこと無く、ダリルは人形と化した兵士に歩み寄った。


………後は触れるだけ。
敵の内部にそっと、手を入れるだけ。





自分よりも遥かに広く、高い後ろ姿。帽子を深く被ってるため、この男の表情は分からないが………知る必要も無い。

灰色の軍服に向かって、ダリルは真直ぐ手を伸ばした。




………サヨウナラ。













指先が男の背中に触れるか触れないかの距離にまで迫った。















ダリルの細い手は

































空を掴んだ。


















「―――…!?」

ほんの一瞬だけ、この事態に目を丸くした。

―――馬鹿な。












目の前にあった筈の男の背中が、ダリルの手を極自然な動きで避けたのだ。


―――この中で動ける?

有り得ない。



何かの間違いだ。





こんな事がある訳が………。













………男に向き直った途端、ダリルの前に、空を切る黒のブーツが霞んで見えた。










………腹部に強い蹴りが放たれた。
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