亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――………っが……!!」
思い切り蹴飛ばされ、ダリルの身体は背中から地面に打ち付けられた。
ビリッと鋭い痛みが全身に走り、衝撃で一瞬呼吸が止まった。
(………一体…何がどうなって………)
ズキズキと痛む腹部を押さえながら、ダリルは素早く立ち上がった。
何が…………何が起きたのか………。
「―――………すまねぇな」
………せせら笑う低い声が聞こえた。
ふざけているのか真剣なのか、掴めない調子の声音だった。
ダリルは内心舌打ちをし、驚きと苛立ちの視線をもって、前を見据えた。
ダリルしか動けない筈の真っ暗なこの空間で、男は頭を掻きながら………不敵な笑みを浮かべていた。
………30代位の男だろうか。
癇に障る様なその笑みはやけに生き生きとしている。子供の様な、しかし何物も見逃さない無邪気で鋭い眼光だ。
烈火の如き真っ赤な、ややウェーブのかかった髪は、この暗闇でもよく映える。
左右の腰のベルトには、それぞれ一本長い剣がぶら下がっていた。
「………子供相手に本気になるのは良くねぇけどよ……ちょいと、焦っちまった…って訳だ」
男はウインクしてきた。