亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………ほぉー…最重要危険人物とは聞いていたが……まだまだ垢抜けないガキなんだな………大した奴だぜ」
「………」
ナイフを握り直し、ダリルは男との距離をとった。
男は真っ暗な空間を眺めながら背伸びをしている。
「……近頃、ここに偵察に来たうちの部下達が、皆帰ってこねぇ有様だったからな。………で、今回は俺が来てみたって訳だ。………何日も前からぶらぶらしてたんだぜ?……もう少し早く来るとか気を遣えよ…」
……男は無茶苦茶な事を言ってくる。
………男の話からすると…やはりダリル達の組織の存在が疑われていたのだ。
つまり……放たれた餌に、まんまと食い付いてしまったのだ。
ダリルは奥歯を噛み締めた。
………早まった。
もう少し連中の行動を詳しく調べるべきだった。
(………この男……)
……………強い。
わざわざ囮として出されただけあって、並の兵士とは違う雰囲気を醸し出している。
その身から滲み出る、奇妙に穏やかな威圧は、戦慣れした戦士の独特な存在感だろう。
「………そんなに不思議か?………俺がこうやって普通に動けるのが………」
「………」
ダリルは沈黙を守る。