亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


男のすぐ後ろで、ふと小さな黒煙が立ち込めた。

現れたのはアレスの使者。しかし、随分と華奢で小柄な兵士だった。帽子の内から覗く凛とした表情は、幼いながらも鋭さを感じさせる。


「……バレン隊長、反国家組織と思われるリーダーゼリアス率いる集団を確認しました。……勘付かれたのか、ゼリアスとその幹部らは行方を眩ませております」

甲高い少女の声だった。バレンはふぅーっと煙を吐いた。

「ご苦労さん。…ゼリアスの捜索は新隊長のジスカに任せる。………勇ましくリーダーの代わりに残った集団を……グラッゾはどうする気だ?」

「現在、我が第6部隊で全員を取り囲んでいる状態ですが、あと五分半後、その場で消去とのことです」

「……………グラッゾも、お前も………容赦無ぇな。……………了解だ。…このガキの連行は、トウェイン、お前に任せる。………ちょい、俺は疲れた…」

バレンはブーツの爪先でダリルを小突き、剣を鞘に収めた。

「空の魔石で一時的に力を吸い取っておいた。当分、理の能力は使えない筈だ。……だが、くれぐれも用心しろよ。完全に使えない訳じゃ…」
















「―――殺してよ」












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