亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
仕方無く、アレクセイはトウェインを両腕に抱え、軽く会釈してそのまま退室した。

アレクセイに抱えられたトウェインは、なんだかとても小さく見えた。




……尋問すべき渦中の人物がいなくなった中で、オーウェンはうんと背伸びをし、こきこきと首を回す。


「………甘いねぇ……キーツ坊やは…」

「…………そうだな」

キーツは苦笑を浮かべ、そっとこめかみに手を添えた。



……………何処かで彼女を心配している自分が、酷く情けなく思えた。


























身体はガクガクと震え、次第に冷たくなっていく。

この状態の彼女を、あの冷たい地下の牢屋に戻すのは気が引けた。敵兵士と分かってはいるのだが……何故かどうもそんな風には見れないのだ。

何と言うか……捕虜というより、どこぞのお嬢様に接している様な気さえしてくる。


(…………私も…甘いのでしょうか……)


散々悩んだ末、牢屋には入れないことにした。元は使用人用だった、何年も使っていない小さな古い寝室がある。
勿論、警備は厳重にする。部屋の外に見張りを置く。



薄暗い個室。
家具の上の埃を払い落とし、隅にあるベッドにトウェインをゆっくりと寝かせた。
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