亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
拘束服の紐を解き、目隠しを外す。
………表に現れたその表情は真っ青で、とても辛そうだった。
身体は冷たいのに、じわじわと浮かんでくる額の汗。
珠の様な汗を、アレクセイはハンカチで丁寧に拭った。
(………突然……どうしたというのか………)
まずこれは演技ではないな、と思いながら、そっと暖かい毛布をかけてやった。
不規則で荒い呼吸を繰り返していたが………それから数分経った頃には、それも穏やかになった。
頬には赤みがさし、身体の震えも無くなった。体温は徐々に戻ってきている。
………よく分からないが、どうにか体調は良くなったらしい。
しばらくは安静にしておこう。
脇で座っていたアレクセイは腰を上げた。
静かに寝息をたてる彼女を、アレクセイはじっと見下した。
…………寝顔まで………見れば見る程……。
(……………似ておられる………姫様に……)
昔はよく、遊び疲れた幼い姫君を、寝かしつけたものだ。
あの頃を思い出す。
………ぼんやりと懐かしさに浸っていると、目下のトウェインの瞼が、うっすらと開いた。
………気がついたらしい。
「…………………ここは……?」