亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
夢心地な焦点の定まっていない瞳が、部屋のあちらこちらに泳ぐ。
「………一階の個室で御座います………牢屋は冷えますからな……しばらくはここで…」
そう言って、アレクセイは部屋から出て行こうとした。
…トウェインの瞼は再び閉じようとしていた。
「…………この部屋か………懐かしい………」
ドアノブを握った手が、ピタリと動きを止めた。
アレクセイはゆっくりと、振り返った。
……………懐かしい?
訪れた眠気に意識を手放そうとしているトウェインは、ぽつりぽつりと呟く。
「………隠れんぼで………よくこの部屋に隠れた………昔………」
……アレクセイは無言で歩み寄った。
…………まさか……………そんな………………。
内では激しく動揺しながら、アレクセイは胸中を過ぎる奇妙な疑問の答えを出すべく、トウェインを再度見下ろした。
完全に目を閉じたトウェイン。
その耳元に顔を近付け…………ポツリと一言、眠りに入ろうとしている彼女に、囁いた。
「―――………………………ローアン様…」
彼女の小さな唇は、微かに動いた。
「―――……………何…?………アレクセイ…………」