亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
はっと気が付くと、アレクセイはいつの間にか扉の方まで後退していた。
何とも言えない温い汗が流れた。
その時、アレクセイの中で依然としてあった正体不明の“違和感”が、有り得ない“確信”へと変わった。
混乱と驚愕。
同時に、込み上げてくる嬉しさに目頭が熱くなる。
…………そうであってほしい。
………そう信じたい。
本当なら今すぐにでも………キーツ様に申し上げたい。
………しかし……。
…………彼女は自ら正体を明かそうともせず、敵兵士である自分を貫いている。
まるでそれが当たり前であるかの様に。
………言えないのか。それとも何らかの理由があってのことか。
どちらにせよ………本人から明かしてくれるまで………何も言うまい。
アレクセイは退室しようと、眠る彼女に向かって頭を下げた。
深く、深く……。
最高の敬意を込めて。
「―――………お休み下さいませ……」