亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………人を指差すのは良くないぞ」

「お前黙ってろよ!」

捕虜から極普通で冷静な指摘をされたが、ここは無視。

それに対し、アレクセイはやんわりと答えた。

「………まあ、よく考えたら必要無いかと思いまして。害は無いと判断しました。それに昨日の事もありますから」


あの敵には厳しい老騎士は何処へやら。今やただの人の良いお爺さんだ。まるで執事だ。………元から半分執事だが。

「……良いんじゃねぇの?お嬢さんの別嬪なお顔が拝めて俺は機嫌良いよ?………なぁキーツ」

ビクゥっと、いきなり振られたキーツは思わず身体を震わせた。

「…………え……あ…」

何と答えていいのか分からずうろたえるキーツ。

彼女の方に目を向けると…………バチッと視線が重なった。


(…………うっ……)


……トウェインは無遠慮に、じっ…とキーツを見て…否、睨んでくる。



………キーツの脳裏に、嫌でも過ぎ去りし過去の幻影が浮かび上がってくる。


注がれるあの澄んだ青い瞳は、やはり彼女と………全く同じだ。







………バクバクと心臓が高鳴る。



………実は、初恋で……………恋い焦がれていた彼女と………同じ………。


………数年経った今もその気持ちは変わらず……自分は引き摺っている。
< 746 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop