亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
この黒い塔には似つかわしくない、流浪する純白の影法師は、塔の上を目指しているようだった。




『―――……いず……何処……いず……こ………』

『―――………何処にお…られ………まするか………』

『―――…………いず………こに………』

全く異なる三種の声帯が、たった一つの身体から漏れ出てくる。

その声は何故か苦しげで……今にも事切れそうな、衰弱したものだった。


何かを求め、宛も無く彷徨っている。




『……………いず…こ………に』

『…………………かの者も………何処に』

『……………………ほんに………憎き者…』






斬り付けても擦り抜けてしまい、その進行を止める事が出来ない。

兵士達は剣を構えつつも、どうすることも出来ずに見守っていた。

奇妙な白い影は、どんどん上へ…更に上へと昇っていく。









「……………隊長………ありゃあ……何ですか?……気味が悪い…………見てるだけで嫌になりますよ……」

少し離れた所で、白い影を目で追う兵士。
武器である槍を出そうともせずに凝視している自分の上司に話し掛けた。

「……………知るかよ。…………ま………良いものじゃ…ねぇだろうな………」
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