亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ジスカはほくそ笑んで呟いた。

………敵意は感じられない。しかし………激しい憎悪による殺気は漂っていた。

自分ら兵士にそれは向いていない。

…………恐らく………この塔の最上階にいる男に、その矛先は向いているのだ。

(………用があるのは…………総隊長の方か…)

まず間違いないだろう。ならば………俺らは…。

「………隊長!我々も追跡して上へと……!」

戦闘配置に付こうとする部下を、ジスカは無言で制した。

………いつもの楽観的な明るい彼は何処へやら。この頃は笑うことも少なくなった様に思える。



腕を組んで壁に寄り掛かるジスカ。

不敵な笑みが、そこにある。






「………止めときな。…………………巻き込まれて死にたくないだろ………」

そう言って、ジスカは踵を返した。
放置を決め込んだ上司に部下は目を丸くする。

「……!!…………隊長!?」

「………うちの部隊からは一人もあれに近付けるなよ―。………面倒事は起こした本人に任せておきましょうか―…っと……」

脱力した様にヒラヒラと部下に手を振り、ジスカはその場から立ち去った。





(…………無駄死にしたくないだろうが…)



………俺も…御免だね。
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