亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――…私に近付くな…………………老いぼれが……………」
すっ…とクライブは剣を持ち上げ、鋭利な切っ先を守人に真直ぐ向けた。
――――ブン………。
クライブと守人との間で、小さな黒い風が渦巻いた。
………インクをぶちまけた様な黒い染みが、空中に円を描いて広がる。
染みはぼんやりとした古代文字を刻み、三重、四重の円となって、右回りに、一方は左回りにゆっくりと回る。
―――不気味な、漆黒の魔方陣。
悍ましい力が、魔方陣から溢れ出ていた。
…………魔方陣の向こうに佇む守人を見詰めるクライブの瞳は、虚ろで、光も無く………………………酷く、冷めていて………。
「――――去ね…下衆が」
―――カッ……と、塔の頂点から黒ずんだ光りが天に昇った。
塔を中心に、凄まじい強風が幾重もの波紋となって広がった。
―――沈黙の森に漆黒の冷気が吹き込み、緑の葉や深い根を………凍て付かせた。
冷たい結晶の塊と化した森は、月下で輝いていた。