亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



「……頼むぜアレクセイ。……城の封印とやらが解けるとなると……おっさんも本気でくるだろうしな…」

書物の山を崩さない様に、オーウェンは欠伸をしながらうんと背伸びをした。

そんなオーウェンを、アレクセイはちらりと一瞥し、ふっと口元を緩めた。

「………そう御考えであるということは……捕虜のお嬢様が我々に与えて下さった情報を……信用なさっている様ですな?……すんなりと受け入れるとは……オーウェン様にしては珍しい…」

「………だな」

ボリボリと後頭部を掻き、へらっと無邪気な笑みを浮かべた。

この男は時々、子供の様な顔を見せる。

「………何でだろうな―………………何つーか……あれは嘘なんか吐かねぇ女だ。…と言うかまず………他人とは思えねぇんだよ………………変だな…」



エルシアの暖かい笑み。
射殺す様な、強情なリネットの鋭い眼光。


容姿も性格も、あの二人と何処か重なるのだ。



………見ていると、懐かしさが込み上げてくる。

キーツと同じで、無性に頭を撫でたくなる。




………敵の兵士であるのに……こんな風に見てしまう自分に、そりゃぁもう驚いている。


…………不思議な娘だ。

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