亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

昨夜の…黒の塔から放出された魔方陣による魔力の事から……何かしら関係があるのかもしれない。


(もしかしたら……アレスの使者があれを放ったのか?)


それは充分に有り得る。過去、一体何度そういう刺客の様なものが送られたことか。




………何かは分からないが………駆除する他あるまい。………危険過ぎる。本能がそう言っているのだ。


ふっ…と両方の目を元に戻し、リストは屋上の柵の内側に戻る。

「法螺貝を吹け!低音の五秒を二回………警戒レベルだ!さっさとしろ!」

リストは屋上の出入り口で控えていた兵士に怒鳴りつけた。

事態の重要さを分かっていない兵士は、とにかく慌てて法螺貝を吹いた。



警戒、の音が丘を中心に風に乗って響き渡った。



再度荒野に視線を移すと、何故か、あの化け物は既に荒野と丘の境目辺りを這いずっていた。

…………移動速度は見る限り遅い筈なのに………………どうやら瞬間的な移動が出来る様だ。………とすれば…ここに辿り着くのはもうあっという間だろう。

………なんとか食い止めねば…。



(………危険…だが………)


リストはそっと腰の短剣の柄を握り締めた。





……先手必勝。



……時間は無い。
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