亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

………行かなければ。

焦燥感だけがトウェインをつき動かす。

早く……早くここから………。



ふと、トウェインの耳に小さな音が響いてきた。………階上からこちらに降りて来る…足音。


――バンッ…。

地下牢に続く扉が思い切り開け放たれた。

………松明の明かりで浮かび上がったのは、アレクセイだった。


「………ルア、やはりここにいたか。……キーツ様がお呼びだ。早急に…」



―――ガンッ!








…格子を叩く音が再び響いた。アレクセイが顔を上げると………険しい表情でこちらを見つめるトウェインと目が合った。

「………………出せ…ここから…。……………私をここから出してくれ…!」

今まで大人しかった彼女の態度が、豹変していた。
訴える彼女は何故か必死で、青ざめていた。

………?


ただ事ではない。

どうしたというのか。

………しかし、捕虜である以上、ここから出すわけにはいかない。一瞬迷ったが、アレクセイは首を左右に振った。

「………なりません。私の一任ではどうにもならない事で御座います。……しかも今は、それどころではではないのです」

「……大いに……関係があるのだ!………私を出してくれ!…あれを………殺めてはいけない!!」
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