亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
…トウェインの必死な形相と意味深な言葉は何を意味するのか。
(………殺めてはならない…?。……城壁の外で何が起こっているのか……分かっているのか?)
………彼女は何をする気なのか。
―――……ドオォォォ……ン……。
………丘全体に地響きが鳴り響く。
この塔の地下まで、小刻みな揺れが深い地盤を染み透ってきた。
パラパラ……と壁から塵や埃が舞い散る。
………何かあったのかもしれない。前線で戦闘に立つリストの身が心配だ。
アレクセイはルアを促し、地下牢の扉に向かった。
今は……彼女の話に耳を傾けている場合ではない。
「………急がねば……申し訳ありませんが、やはり貴女様を出すわけには…」
そう言ってアレクセイはトウェインに背を向けた。
―――その直後
「―――アレクセイ!!」
凛とした、威厳に満ちたその声に、アレクセイは思わず立ち止まった。
………振り替えると、澄んだ青い瞳に………………身体が震えてしまいそうな程、切れのある鋭い眼光に射ぬかれた。
………牢屋の中で佇む彼女。細い華奢な姿であるのに……この時、アレクセイの目に映っていたのは………ただの少女ではなかった。