亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ブンッ、と剣を一振りし、両手で構えた。
「…消しますか?アレクセイにも一度見せた方が……」
「……それもそうだが…またいつ動きだすか分からん。見せるのは後からでも良いだろう…………」
……キーツは不意に、辺りをグルリと見回した。
浮かべる表情は険しいものへと変わる。
「………どうかしまし……」
―――……僅かな、気配。
リストは注意深く周囲に目を凝らした。
………感じるのは、視線。何処からか、何者かがこちらを監視している。
………この、妙に静かでじんわりとした存在感。………よく知っている気配は…。
「………何処かに……アレスの使者が……」
『――――――何処に』
それは突然だった。
ぞくり…と背筋に悪寒が走るや否や、リストの視界は天地が逆転した。
いつの間にか煙の様な冷たい闇がリストの足元を這い、油断していた彼を一瞬で束縛した。
絡み付いた闇はリストを軽々と持ち上げ、逆さまに宙吊りにした。ギリリ…とそれは全身を締め付けた。
「………ぐっ………!!」
「リスト!!」
間一髪のところで後退したキーツ。
………目の前の化け物は見る見る内に己が身体を変貌させていった。