亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
巨体の頭に、ぼんやりと魔方陣らしきものが浮かび上がった。
円の中の古代文字はグルグルと回転し、黒い光を放つ。


………ただの黒い塊であった化け物の形状。その胴体は徐々に細くなっていく。

上から下にいくにつれて細くなる、樹木の様な姿となった。



化け物の広い背中に次々と鋭い矢や槍が放たれたが、それらはめり込むと同時にズブズブと吸い込まれていった。

その間にも、リストを締め付ける力は増していく。

「……………っ…………こぉの……野…郎ぉが……!!」

絡み付く闇から僅かな隙間を見つけ、そこに長い爪をあて、思い切り横に裂いた。

一瞬揺らいだ闇に、何処からか巨大な槍が突込んで来た。

………巻き込まれて……刺さる!?

「………うわっ…!?」

反射的に身を捻り、槍を紙一重で避けた。


槍は当たり所が良かったのか、吸い込まれる事なく刺さった。

靄の様に分散した闇から解放されると同時に、リストは飛び下がって距離をとった。


足元に自分を殺しかけた槍が転がる。



「―――無事かリスト~」

丘の上から聞こえる脳天機な声。………爽やかな笑みのオーウェンが目に入った。

「………お前か!!どさくさに紛れて殺す気か!!」

「……はぁ?聞こえねー」


………絶対に聞こえている筈なのだが、彼には聞こえないことになっている様だ。
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