亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
キーツを中心に、砂利や砂埃が波紋の様に広がり、強風にさらわれて飛び散った。
周囲にいた兵士達のほとんどが衝撃に耐えられず、風に煽られて転倒した。
「―――おわぁっ!?」
丘の上から見下ろしていたオーウェンは、咄嗟に塔の柱の後ろに避難した。
かまいたちの様な砂埃が辺りを切り付けていく。
「………勘弁してくれよ……お前が戦闘に出た後はそこら中砂塗れなんだからよ………」
ブツブツと呟きながら、この多大な影響をもたらすキーツの三振りが終わるのを待った。
それをまともに浴びた化け物はというと、今までいた場所から十数メートル離れた所まで、吹き飛ばされていた。
キーツを中心に、地面には小さな亀裂まで生じている。
吹き飛ばされた化け物は、深く刻まれた生々しい切り傷から体液を流し、ビクビクと痙攣していた。
キーツは剣を再び握り直し、横たわる化け物の元へゆっくりと歩み寄って行った。
歩きながら、まだ化け物との距離が数メートルある状態で、剣を頭上に掲げる。
「………さっきまでの元気は何処にいったんだ?……魔力も半分以下になっているぞ…………………二回目だ」
ブンッ、と再度垂直に空を斬った。
――瞬間、化け物に向かって真直ぐ地面に亀裂が生じ、岩肌が盛り上がり、見えない衝撃はそのまま化け物を切り付けた。