亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
砂嵐と突風の連続。
化け物の巨体は弾かれた様に吹き飛ばされ、離れた荒野にザザザァ―っと身体を打ち付け、跡を残していった。
砂塗れの巨体は、胴体が横に一刀両断されていた。
胴体の真ん中から下は、煙の様に消え失せ、滑らかな切断面からほとばしる漆黒の体液が、大きな水溜まりを作っていく。
………化け物はもう、動けなかった。
ピクリと時々震え、低い呻き声を漏らす。
…キーツは化け物を真直ぐ見据えながら、歩み寄った。
「………………興醒めだ。………二振りでも充分だったな……」
黒い水溜まりの中央で痙攣する化け物。
その聞き取りにくい呻き声は、はっきりとキーツの耳に届いた。
『…い………何処……に……………おられ………ま…する………か』
「………何を言っている……」
訝しげな表情を浮かべるキーツに、その呟きは繰り返された。
『…………い……い……何処…に……………………………………………………………王よ……』
……キーツは剣を構えた。
化け物を見詰めるその表情には……苛立ちと憤怒が露わになっていた。
「……………王……だと?…………………貴様らが………亡き者にしたのだろうが………!!」
………キーツは、剣を振り降ろそうとした。