亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~










―――フワリ、と小さな風がすぐ隣りを過ぎて行った。



……同時に、化け物が中央を占めるキーツの視界に……………小柄な人間の姿が、突然割り込んできた。





意表を突かれたキーツは、振り下ろそうとした剣を咄嗟に引っ込めた。




目の前で風に流され、絹の様な光沢を放つなびく金髪。

全てを見透かす様なスカイブルーの瞳が、キーツを映した。



「殺めてはならん!!……………違うのだ!……敵では……ない…!」

「…………っ…!?…………何を………!………………牢を抜け出したのか……!?」

地下牢にいる筈のトウェインが、今目の前で化け物を背に佇んでいる。
………どういうことだ…?


「………そこを退け」

「……敵ではない。あの者は………私に用があるのだ…………………近付くな!」

そう言うなり、トウェインは踵を返して横たわる化け物の元に歩み寄った。

「………お前に?………………………っ…!…ルア…!」


今まで何処にいたのか。キーツの前に、ルアが立ち塞がった。それと同時に、背後から聞き慣れた声が自分を呼んだ。



「―――キーツ様!お待ち下さい!…お待ち下さりませ!!」


兵士達を押し退けて、アレクセイがこちらに駆けて来た。

トウェインの突然の出現に、いきり立ったリストがアレクセイに怒鳴り散らす。
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