亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『……………王よ……………王よ……………この時…を…お待…ちして……お…りました…………長き歳…月を…経…て……………………よう…………や…く』
ズルリ………ヌチャ………。
傷口から多量の体液が流れ続ける。
化け物は痙攣し、グラグラと揺れていた。
黒い魔方陣が浮かぶ大きな頭に、トウェインはそっと触れた。
「…………私は……………どうすれば良い?………………何をすべきか、教えてくれ………」
化け物は伴う痛みのためか、身体を屈めたり反らせたりと繰り返していた。
『―――…………名を。…………………誠…の名………を………我……に…我ら……めに…………名乗……ら…れま……せ…』
「あの方は………違うのです……………………あの方は……」
苛立ちと困惑を露わにするキーツに、アレクセイはしどろもどろに伝えようとする。
アレクセイの手は、震えていた。
戸惑いながら。
しかし、懸命に。
「…………あの方は………キーツ様…………………」
―――アレクセイは真直ぐ、キーツを見据えた。
「―――ローアン様…御本人なのです」