亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


アレクセイの切実に声が、ここ数日朝から塔内に流れている。

「お召し物を…」としつこく追いかけて来るのを振り切るのが、毎朝の日課だ。

















「………城の光が弱い?」

珍しく昼前に起きて来たオーウェン。怪訝な表情で、山盛りの木の実に手を突っ込んで一つずつ口に放り込んだ。

「ああ。………微かだがな。ルアも反応している」

キーツは剣の手入れをしながら言った。
その隣りで、リストはテーブル上に広げた大きな地図をじっと睨んでいた。起きてからずっとこれだ。
訪れる『時』の日に対して、何らかの策を練っている様だった。

「つまり何だ?………開城の前兆か?…その城の封印ってのは、どうやったら解けるんだ?………バァーンと勝手に開く訳じゃねぇよな……」

「何らかの仕掛けがあるんだろう。…開城するにはいろいろと条件がある筈だ。まず……………………………………………」

………キーツは何故か口ごもった。刀身を磨く手の動きは止まってはいないが。

「………………ロ………………………………ロー………………ア………………が、いる事が絶対的な条件であって…」

「はっきりと言えよ。ローアンって」

…ローアンと聞いて、キーツは天敵の気配を察知した小動物の様にビクリと震えた。

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