亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
アレクセイは、姫としてのたしなみだとか御婦人ならばとか……とにかく男装から彼女を卒業させたくて仕方無いらしい。
ローアンからすれば、余計なお世話であること極まりない。

「見せるな、近寄るな!可能な限り私から離れろ!……おい、ヴァンニ!この老人は何がしたいんだ!」

ローアンは冷や汗をかきながら部屋の周りを早足で歩き回る。その後ろを、アレクセイは笑顔でやはり追いかけて来る。

「………ヴァンニは知りませ~ん。てか、その呼び方止めようぜ。オーウェンで良いって。俺、自分の家嫌いだったからさ。…ついでにその勇ましい口調も直そう!」

アレクセイから逃げ惑うローアンが、自分が腰掛けている椅子の後ろを通り抜けようとした時、その一回り以上も小さな身体を両手で捕獲した。


……ローアンは声にならない叫びをあげる。

「―――うわああぁ!?放せ!………圧死するではな、い、かぁぁ………!!」

ただでさえでかいオーウェンに、ぬいぐるみを抱くかの様に思い切り抱き締められているローアン。

事実、本当に圧死しそうだった。

「俺の可愛い可愛い義理の妹だろ―?そんな男らしい義妹は…認めない。いやぁ、エルシアに似て抱き心地が良いなぁおい」

終いには頬擦りまでされた。
ローアンは「肌が……!摩擦で肌が焼ける!?」と悲鳴を上げた。
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