亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………思わないかって……言われても……」

……ふと、真っ赤になって既にギクシャクしているキーツと視線が重なった。





………幼い頃の記憶は殆ど曖昧だ。そのため、このキーツと自分が関連する過去が全く分からないのだが…。

(…………婚約…ということは……)








彼からの婚約の申し入れに、自分は間違いなく承諾したのだ。



………承諾を。



(…………この男と……私が……婚…約)


すっかり硬直してしまったキーツをじっとガン見していたローアンだったが………そう改めて考えると……なんだか…急に気恥ずかしくなってきた。


心なしか、ローアンの頬に赤みがさした。
プイッと顔を背ける。

「…し………知るか、そんなの……!婚約など………分からん!……わ、私は……………………………そんな目で見るな!!馬鹿が!!」

なんだか切なげな目でこっちを見詰めてくるキーツ。………止めろ。………恥ずかしいではないか!

この手の話題は苦手だし、嫌いだ。………顔を合わせる度に赤面になるこの男。…………こっちにまでその赤さが移りそうになる。


気恥ずかしくてうろたえていたローアンだが………それは徐々にはっきりとした態度をとらない彼への苛立ちへと変わっていった。

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