亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………苛々する。何なんだこの男。私より二つ年上だったよな?だよな?だよな?嘘だろ。
何だこの器の小ささは!敵対していた時と全く、全く違うではないか!!何て言うか…甘い!甘いぞ!よく総団長やってこれたな!部下は皆同情でついて来ているだけだろ!!

何で………何で……!

「…………シャキッとしろシャキッと!!女々しいにも程があるわ!!」

「おおっ!?何だ?」

恥ずかしそうに可愛らしく頬を赤らめていた彼女が、急にキーツに罵倒を浴びせた。

………さすがは王族三姉妹の末娘。鬼の次女リネットの気性もきちんと兼ね備えている。

「………わ、私と対峙した時は優れた剣の名手であり、並ならぬ覇気を放つ総団長として相応しい人間であったのに………少し顔を斬られただけで済んだが……私は殺されかけたというのに………何だその体たらくは!!」

「キーツ様!!ローアン様の御顔に斬り付けたのですかぁ!?」

あああ、キーツ様の罪はこのアレクセイの罪…!、と真っ青になる妙な老人。

「………あ、あれは………分かっていたらあんな事は……」

「……分かっていたらだと?……今は違うが、あの時は互いに敵だったのだ!それならば武人としての自分の立場を貫き通すのが筋というものだろうが!私なら例え知っていても、敵同士なら貴様を容赦無く斬るわ!!腑抜けめ!」






…………遠巻きに聞いているリストやオーウェンは、…わぁ…と事の成り行きを見守っていた。

特にリストは、時たまキーツが見せる鬱っ気な部分に多少の不満があり、しかし言いたくとも言えなかったのだが…………今、全部彼女が代弁してくれている。
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