亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
この臭いは……冷たさは……。
「………何処からだ」
『………貴族の塔………実に堂々としておりますな……』
『………憎らしい………若輩ものよ……』
……ローアンは反対側にある塔へと走った。
………その塔内では、緊張の糸が張り詰めていた。
薄暗い丘の上。
城の光が間近で照らすその場所に突然、四、五匹の真っ黒な獣が現れた。
城門の見張りをしていた兵士達は事前に気配を察知し、槍や剣を構えていたが……その獣から敵意は感じるが、今この場で襲いかかろうとする気は無い様だった。
囲んでいた兵士達は互いに目配せをし、警戒しながら獣を城門内に導いた。
「………魔獣ライマンのお供………毎度変わりませんな」
入って来る数匹のライマンを窓から眺めながらアレクセイは呟く。
「人間不信なんだよ………可哀相な奴等だ」
「二人共黙っていろ…」
オーウェンとアレクセイに、キーツは苦笑しながら言い放った。
袖のボタンや襟。きちんと身なりを正し、立て掛けていた剣を握った。
「………行くぞ。………久方振りの客人だ。無礼の無い様にな」
塔の一階の大広間。
たくさんの兵士がグルリと囲むその中央で、ライマン達は唸り声をあげながら堂々と佇んでいた。