亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


この臭いは……冷たさは……。

「………何処からだ」

『………貴族の塔………実に堂々としておりますな……』

『………憎らしい………若輩ものよ……』



……ローアンは反対側にある塔へと走った。



………その塔内では、緊張の糸が張り詰めていた。































薄暗い丘の上。
城の光が間近で照らすその場所に突然、四、五匹の真っ黒な獣が現れた。

城門の見張りをしていた兵士達は事前に気配を察知し、槍や剣を構えていたが……その獣から敵意は感じるが、今この場で襲いかかろうとする気は無い様だった。

囲んでいた兵士達は互いに目配せをし、警戒しながら獣を城門内に導いた。






「………魔獣ライマンのお供………毎度変わりませんな」

入って来る数匹のライマンを窓から眺めながらアレクセイは呟く。

「人間不信なんだよ………可哀相な奴等だ」

「二人共黙っていろ…」

オーウェンとアレクセイに、キーツは苦笑しながら言い放った。
袖のボタンや襟。きちんと身なりを正し、立て掛けていた剣を握った。

「………行くぞ。………久方振りの客人だ。無礼の無い様にな」
















塔の一階の大広間。

たくさんの兵士がグルリと囲むその中央で、ライマン達は唸り声をあげながら堂々と佇んでいた。
< 810 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop