亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
階上からゆっくりとキーツが降りて来ると、周りの兵士達は揃って敬礼をした。

後ろからオーウェンとアレクセイ、リストも続く。

ライマン達は唸り声を更に低くし、牙をむき出しにした。

「………出て来いよ。シャイな兄さん」

からかう様な口調だが、そのオーウェンの表情は険しい。





唸るライマン達が急に静かになった。
同時に、辺りの空気が冷え冷えとしたものに変わる。



―――その途端。
音も無くそれは現れた。
ライマンの前に、真っ黒な黒煙に似た靄が立ち込めたかと思うと、人の形をしたシルエットが浮き彫りになった。


現れた人物は注がれる敵意の視線に少しも怯むことも無く、むしろ見下しているかの様な、なんとも冷たい視線を備えていた。

普段開かれることの少ない綺麗な口元が、僅かに緩んだ。






































「―――………息災の様だな………諸君」























ゾクリとする笑みを、ベルトークは浮かべた。










< 811 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop