亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――…聞く必要も無いが…………宣戦布告……だな?」
オーウェンの問いに、ベルトークは鼻で笑った。
…この男……相変わらず…腹が立つ。
顔をしかめたオーウェンを無視し、ベルトークはキーツに顔を向けた。
「………無論だ。話は全て聞いているだろう?………死に損ないの姫君からな」
………キーツの剣を掴む手に、力が入った。ベルトークは腕を組み、細い指先で片目のレンズをずらした。
「………単刀直入に言う。………二週間後の朔の日。あのクーデターからちょうど六年になる日の、日の入り。………我が総隊長クライブ=フロイアの指揮により、進撃する。………白黒つけようではないか。この無駄な戦争に」
「………無駄…だと……!」
いきり立つリストを、アレクセイが押さえた。キーツとオーウェンは目前のこの男を黙って睨み付ける。
「………開城の話は聞いたな?…そのために…六年も待ったのだ。………我らは………………………………………容赦しない。……貴様らとの下らないお遊びには………飽きた。……そう嫌そうな顔をするな。…………総隊長からの伝言だ」
ベルトークが言葉を区切る度に、奇妙な沈黙が漂う。
………その中には、殺意しか無かった。