亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………白黒ついた後……敗者側の兵士はどうなる?……捕虜はありか?」

「甘いなオーウェン=ヴァンニ。………捕虜など要らぬ」

「……………皆殺し…か」

ボソリとキーツは呟いた。張り付けにされても、晒し首にされても、文句は言えないということだ。

「………用件はそれだけか?…日時諸共聞いたぜ。………済んだらさっさと…失せろ」

あからさまに敵意をむき出しにするオーウェン。
……「言葉に気を付けろ」、とキーツが諌めた。







「―――………ベルトーク………隊…長」






ふと、その声は塔の扉の方から聞こえてきた。

グルリと囲む兵士達の奥に、息を切らしたローアンの姿があった。ベルトークはローアンを一瞥する。

「………隊長、だと…?…ふん……寝ぼけた事を言うな。………抜け出した貴様が何を言うか。……貴様はもはや、こちら側の人間ではない……」

「………」

……冷たく突き放すベルトーク。………当然だ。私は、裏切り者。………尊敬していたこの人は……敵。

私は、敵。



………敵、だらけ。











「……いつもなら宣戦布告のみであるが………今日は別件もある」

「………別件?」

宣戦布告をした後はすぐに消え失せてしまう彼なのだが………別件とは?

言うや否や、ベルトークはローアンに向き直った。

「………ローアン姫よ。……貴様に用がある」


ベルトークの背後で、カチッ……と剣が鞘から外れる音がした。

………警戒心を露わにしたキーツがぎろりと睨み付けてきていた。
ベルトークは小さな溜め息を吐いた。

「………最初に言っておくが………用があるのは………私ではない」

………??


キョトンと惚けた顔を浮かべるローアンに、突然…………甲高い声と衝撃が飛び込んできた。
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